喉まで出かかった言葉を、私は必至で飲み込んだ。

「ありがとう」とか。

「ごめんなさい」とか。

ありきたりな言葉はいくらでも浮かぶけど、私が伝えたいのは、きっとそんな言葉じゃない。

「大好き」と。

「今でも好きだ」と。

言いたいのに、言えないんだ。

だってそれは二人で決めた最後の約束。

たくさんある選択肢の中で、私たちがそれぞれ自分のために選んだ道は、一緒に歩むことを許さなかった。

分かっていたんだ。

ともに歩む未来など存在しないと。

それぞれの人生のためには譲ることができないのだと。

頭の中では理解していた。

それでも。

「さようなら」と。

素直に言えない自分が悔しい。

かっこ悪くても構わないから、引止めたかった。

でもできなかった。

だから黙って背中を向け歩き出す。

振り向かないから。

けして、振り向かないから。

あなたが思い出に変わる、その日まで。