教室からだいぶ離れた音楽室の前で足を止める。




「…ごめん、急にあんなこと言って」




振り返らず口を動かす。



あんなこと言ったのなんか初めてで、まだ震えが止まらない。



手先がかすかに震えている。




「ううん、ありがとう。……今度はあたしが青ちゃんに助けられたなぁ」



「え…」




関西弁?



それに、“今度はあたしが助けられた”って。



あたしのこと“青ちゃん”って。



あたしのこと名前で呼ぶ子なんかいないのに…。



椎名織斗のことだってそう。



あたしがあんなことになったのは、この子が言い出したからで…。




「…あんた……だれ…。あたしのこと知って……わっ」




振り向く瞬間、足がもつれた。



そのせいでバランスを崩し、体が前に倒れる。




「青ちゃ…」