「宮野」
膝に手をついた状態のまま、ゆっくりと顔を上げる。
すると、あたしよりはるかに大きい手があたしの頭を撫でる。
温かくて優しい手。
安心する。
「頑張ったな」
そう言って、いつもの笑顔を見せてくれる。
「……ん…う…ん」
なかなか息が整わず、上手く喋れない。
早く…。
膝から手を離し、松野の服の袖を引っ張る。
松野はあたしに気を遣ってか、少し屈んでくれる。
少しずつ息を整える。
「……ありが…と…」
小さな声。
でも、やっとのことで発した言葉。
一言じゃ足りないくらい、感謝してる。
ありがとう。
ありがとう。
心の中で何度も繰り返す。
松野は聞こえてないのか、何も言わない。
息が整ったところで、もう一度松野に顔を向ける。