椎名織斗と別れ、すぐに松野のところへ向かう。
早く会いたくて。
ありがとうって言いたくて。
息を切らしながら全速力で走る。
目に映るものが次々と変わる。
耳元を通り抜ける風が心地よい。
交差点の赤信号がもどかしい。
早く早くと急かす。
赤信号が青信号に変わると同時に走り出す。
そして2つ目の角を曲がり、コンビニの前を通り過ぎる。
すると100メートルほど前方に、携帯を片手に持つ松野が見えた。
「………つの…。まつ…の」
走りすぎで声が出ない。
早く言いたいのに…。
「はぁ…はぁ…」
息ができず、立ち止まり膝に手をつく。
顔を上げようとしたその時、視界の端に靴が見えた。
見覚えのある靴。