だけど、許すわけにはいかない。



あたしはアンタなんかより、もっともっと傷ついた。



できるなら、あの頃のあたしの気持ちを味あわせたい。



だけどしない。



したら椎名織斗と同じ人間になる。




『宮野……大丈夫?』




松野の声にハッとする。




「あ……」




椎名織斗の目線は、あたしが握っている携帯に向けられている。



そして、あたしの手の方に椎名織斗の手が伸びてきた。



いや、携帯と言ったほうがいいか。



あたしは勢いよくベンチから立ち上がる。




「やめて!」




椎名織斗に向かって怒鳴る。



携帯を両手に持つ。




『宮野?』



「あ、何でもないから気にせんといて」



「青、それ誰?」




あたしが両手で持っている携帯を、指差しながら聞いてくる。