「あの人って……」
「うん、さっき会った人」
“さっき会った人”
それは、“椎名 織斗”。
「……や…っだ…」
「宮野…」
「やだぁ…っ」
「宮野!」
松野の初めて出した大きな声に、あたしの肩が跳ね上がる。
その瞬間、松野がその大きな手であたしを優しく包み込む。
「やだ…怖い……」
「宮野……いい加減ケジメつけないと、宮野が前に進めん」
「………怖い…」
声が震える。
松野のあたしを包む手に力がこもる。
「大丈夫やから。俺が一緒におるから」
……どうしてだろう…。
松野の言葉が、すごく安心するのは。