「…っから……その顔やめてって言ったじゃん」
「ん?」
「……何もない」
「えー…気になるんやけどー。教えてよ」
松野は、あたしの腕を掴みブンブン振っている。
そんな松野の手を振り払って
「まじで何もないから。気にしないで」
と言って、来た道を戻ろうと向きを変えた。
その時、再び松野に腕を掴まれ足を止める。
あたしは松野のほうを向き、呆れた顔する。
「だから、さっきのは本当に何もないから。気にしな…」
「ケジメつけに行こ」
あたしの言葉を遮り発した松野の言葉に、あたしは動作を止める。
体が少し震える。
震える声で松野に問いかける。
「ケジメつけるって…」
「うん。……あの人に会いに行こ」
その言葉に、脈打つ速さが速くなる。
“あの人”
それはたぶん…ううん、きっと――…。