「…ちょお待ってって!」




そう言ってあたしの肩を掴んだ。




ビクッ──…




あたしの肩が跳ね上がる。



そして恐る恐る後ろを見る。




「な…なに…」




あたしが振り向くと、男の人はあたしの顔をじっと見た。




……何この人…!?




あたしは一歩後ろに下がる。



それでもあたしの顔を見続ける。




ちょ…何なのこの人…。



……殴ってやろうかな…。




あたしがそう思って、男の人を見た。



その時男の人が、またあたしの頭をぽんぽんとした。




「ちょ…な…なに?」



「…目ぇ腫れてへんな。 よかった。 ほんまにもう大丈夫やな?」




 
え…そんな事のために…追いかけてきてくれたんだ。



……てゆーか…迷惑だな…あたし。




あたしはそっぽを向いて




「……大丈夫だから…」




そう言った。



そして歩き出そうとした時




「あんた…名前は?」




と聞かれた。




……なんで名前なんか…。




そう思いながら




「……宮野」




と無愛想に答えた。




「下の名前は?」




男の人があたしを見る。




「……教えない」



「え…なんで?」



「教えたくないから」




あたしはそれだけ言うとまた足を動かした。