見上げた月は、あまりに中途半端な形をしていた。
 その歪さがまるで私みたいだなんてぼんやり考えていたあの夜。
 陸は痛いくらいに私を抱きしめて言った。

「頼むから…頼むから、もうそんなこと二度と言わないでくれ」

 耳に響く陸の声は、微かに震えていた。
 それは悲しいからなのか、怒りからくるものなのか、私には判断がつきかねていた。

 ただ、痛いほどに陸の感情が私の中に流れ込んでくる。

 どうして、陸はこんな私を、こんなにも無条件で愛してくれるのだろう?

 どうして、陸は他人にここまで自分の優しさやぬくもりを分け与えることができるのだろう?

 答えの出ない「どうして」がぐるぐる、ぐるぐる私の中で渦を巻く。