「…やっぱ無理」

もう30分近く尚樹の番号を出してはclearを押しての繰り返し。

「もうっ。よし、わかった」

「へ?」

携帯を取り上げ奈津美は番号を呼び出し、発信ボタンを押していた。

「はいっ」

「えっちょっ…」

携帯を返され聞こえるのは発信音。

5コール目が鳴り終わる直前にあたしの地獄旅行が始まってしまった。

「てめぇ、今なにしてんだ」

「な…奈津美の…い…えに」

「電話してもでねぇしメールしても返さねぇで…なんでだよ」

「充…電…切れ…て」

すっかり涙声になってるあたしは必死に涙をこらえていた。