「ついに来たな」
「ああ」
「あの時はびっくりしたよ。お前が乗り込んでくるなんて思わなかったし」
「俺もびっくりだったよ。まさか見合い相手がお前だなんて」
明日香は「ははっ」と軽く笑う。
「ま、でも先超されるなんてな」
「俺もまさかだよ」
それからしばしの沈黙が流れた後、俺はずっと聞きたかったことを聞いてみることにした。
「なあ、ひとつ聞いていいか?」
「ん?」
「理沙のこと、好きじゃなくても結婚してた?」
明日香は予想外だったのか、少しの間考える素振りを見せた後、
「知らね」
と適当に答える。
でもその顔はどこか人を小ばかにしたようにニヤリと口角を上げていた。