「葵!何騒いでるの!元気有り余ってるならちょっと買い物行ってきてちょうだい」


お母さんが一階から叫んでるけど、今はそれどころじゃない。


お母さん、ごめん…

無視します!


私は枕を拾って再びベッドに横になった。


「あー!おー!いー!」


無視無視。


「あー!!おー!!いー!!」


………。


「あーー!おーー! 「「もう!わかったよ!」」


私はしつこいお母さんに耐えきれなくなって、パーカーを羽織り部屋を慌ただしく飛び出した。



「行ってきまーす」


空は朱く色を変え、まだ少し肌寒い。

開いていたパーカーのファスナーを上まで閉めて、指先を袖に隠した。


徒歩10分のスーパーに着くと脇目も振らずに目的の物だけを買い、そのまま来た道を戻る。

夕日はスーパーにいた数分で沈み、住宅街は薄暗くなっていた。