昼休み。


「恭介。ちょっと聞きたいことあるんだけど」


里美と合流した私は、恭介を廊下に呼び出した。


「ねえ、桜井先輩のこと何か知ってる?」

「えっ?」

「私、昨日学校の庭で会ったの!似てる人に…ううん、あれは桜井先輩本人だった!」


私は焦る気持ちを抑え込もうと、掌を力強く握る。


「けど、桜井先輩は県外の高校に進学したでしょ?ここにいるわけがないし…でも葵が先輩を見間違えるわけもないし」

「いや…えっと…」


顔を強張らせた恭介は、明らかに焦っているように見える。

いつもは堂々としてるのに、こんなたじたじな恭介見たこともない。

その煮え切らない態度に苛立ちさえ覚える。


「お願い!何か知ってるなら教えて!?」

「…しっ、知らねえよ」


二人でジリジリと廊下の端に恭介を追い詰める。

その間、私達を見ないように必死で目を泳がせる恭介。

ますます怪しい…


「ホントに?」


恭介の背中は廊下の壁に当たり、もう後ずさり出来ない。