(一)
日の出の時刻は午前五時。
春になりたての今では肌寒く、息を吐けば白色が空気と混じり合う時。
軍服に身を包み、その上から藍色の外套を着用したルカをミカエルは送り出すところでもあった。
かじかむ手先が赤く痺れる。ルカの襟元がよれているとミカエルは手を伸ばして直そうとするも、上手く動かない。
心情にある不安も混じっているのか、決められた運命にちょっとした抵抗をするかのように、ミカエルは出発に定着を与えていた。
無論、ミカエルに邪魔しようなどという気持ちはない。ただの心配だ。軍人ならばいつ今生の別れとなってもおかしくないが、危ないと分かっていて笑顔で送り出すことなんかできない。