そんなことは知ってか知らずか、エレナは道すがらにチワワに吠えられた程度の些細なことらしく続けた。


「なんか盗賊とかに襲われちゃってー。今時、盗賊なんか流行らないのにバカですよねー。バカなんでいっぱい凝らしめてきましたよー」


冗談にも捉えていいのに、事実ながらにありそうで完全否定ができない。


ここに来て、エレナはレインと似たような裏を持つことに気づく。


黒さと言えばいいか、無邪気と邪気が真逆で構成されるような“油断ならなさ”。大概の輩はその朗らかな笑顔に騙されるも、普段からレインの本質を見ているミカエルたちには背中のどこかがひんやりとも感じられる。


「いいねー、君。宿じゃなくてさ、俺の部屋とかどう?けっこー広いんだけど」