「ただいま」

「あら、優那遅かったわね」

「ん、汐里とあそんでた」


ママはそう、と一言呟いて
自分の部屋に戻っていった。


 
あぁ荷物まとめなきゃだっけ。 
自分の部屋のドアに手をかけた瞬間



「ただいま」

聞きなれた、しばらく聞いていなかった
低い声が玄関に響いた。




「パパ?」

「優那、ただいま」

「お、おかえり」


久々に見るパパの顔は優しくて
やっぱりあったかい。


「優那、ごめんね。こんなパパで」

そう言ってあたしの首にそっと触れた。

ヒヤッと冷たい感覚が体を伝って
パパの手が離れた。



「よく似合う。大人になったらきっと
 もっとよく似合う。その姿は見れ
 ないけどパパは優那が大好きだよ」



そっと自分の首に触れた。



え?………首にかかるネックレス。
形はきっと、ハート。



「パパ、ありがとう」



うまく笑えたかはわからない。
でも、パパはもう一度笑った。


パパとママの寝室だった部屋で
ママは静かに泣いていた。


パパの物は何一つ残らないこの家に
静かにおかれた写真立て。


3人で仲良く笑ってる写真。
そっと段ボールのそこに入れた。