「ゆーうーなー!」
後ろから抱きついてきたのは
あたしの親友の神埼汐里(カンザキシオリ)
小学校から仲良くなって
今ではいつでも一緒。
汐里だけには何でも話せる。
「おはよ」
「朝から元気ないねぇ?何かあった?」
声も顔もいつもと変わらないのに
『何かあった?』って聞く汐里は
いつも真剣。
あたしの変化に誰よりも早く気づくの。
「ううん、別に」
「そう。何かあったらいいなよ」
何かあるってわかってても
しつこくは聞かない。
それがほんとの汐里の優しさ。
あたしは優那、なんて名前のくせに
優しさなんて欠片もなくて
いつも汐里と自分を比べて
嫌になってた。
汐里はかわいくて優しくて
ほんとに女の子らしい子。
あたしは恋のひとつもしたことなくて
可愛げないし明るくもない。
友達も少なくて男との関わりも
ゼロに等しい。