‘夫’
そんな言葉を言えば優子は目を大きく見開き、ぎゅっと俺が着ているコートを握りしめた。
それと同時に優子の中学のクラスメートからは…
驚きの声が上がり信じられないという言葉がちらほら。
「拓斗さん」
「ん?」
「あの、いえ、なんでも」
頬を赧らめて笑顔を見せてくる優子を連れ去りたいと思いに駆られる。
「優子、戻らなくていいのか?まだ始まったばかりだろう」
そんな気持ちをグッと押さえるようにそう言えば、また優子は頭をぷるぷると横に振る。
これじゃ、優子に嘘をついた意味がなくなる。
―…そんな時。
「ねー。奈々の彼氏は?」
と一人の女の子が言った。