「うちのなんかねぇ、次女の出産時に!」
「あれはもう許したって…」
「許す?誰が出産中の上さんほっといてスナックいく亭主を許すっていうのさ!」
漫才みたいなおじちゃんとおばちゃん。
今はこんな風に口喧嘩みたいな事をしているけど…
おばちゃんとおじちゃんが腕を組んで出かけてる姿を、この町内に住む人全員5回以上は見た事があると思う。
私は数え切れないくらい。
「ひぃー」
「こらー逃げるんじゃない!」
微笑ましいなぁ、なんて思いながら割り箸を動かしてると…
ふと拓斗さんの顔が頭に浮かんできた。
―…会いたい。
まだマンションから出てきて24時間も経っていないのに、私は拓斗さんに会いたくて会いたくて胸が苦しいよ。