「パジャマっと」
箪笥から取り出したパジャマはピンクと白のギンガムチェックの物。
そのパジャマからはお母さんがいつも使っている洗剤の香りがする。
柔軟剤の匂いではなくてただただ普通の洗剤の匂いしかしない。
部屋の中だってそう。
アロマやお香をする訳でもなく消臭剤のスプレーをする訳でもなく、強いて言えば太陽と畳の匂いっていうのかな?
そんな人工的ではないけど自然につく匂いが好きだった。
「一番落ち着く…?」
懐かしい物や宝物で溢れていて特別な匂いもせず畳の匂いがする。
それが一番落ち着くと思っていた。
それなのに今は物足りない。
きっと、それはここには拓斗さんの痕跡が1つもないから――…