「母さんは―――そっか父さんと出掛けてるんだったな」
玄関の電気を付けながら克幸がそうつぶやく。
仲のいいおばさんとおじさんの事だ、きっとバレンタインのディナーにでも出掛けたんだろう。
私は克幸に連れられて、そのままアイツの部屋に入った。
「今暖房かけたから、すぐ温まる。熱いお茶入れてきてやるよ」
そう言ってカバンを置いて部屋を出ようとした克幸を、私は勇気を出して呼び止めた。
「―――待って、克幸!」
「さお、話なら後で……」
「いいから!」
だって、こんなの勢いがないと渡せないじゃないか。
「―――コレ!」
私は、克幸の胸元に押し付けるように小さな紙袋を渡した。
「え?何―――」
面食らいながらそれを受け取った克幸は、可愛らしい包みを見て悟ったらしく黙り込んだ。