「……寒っ」 2月も半ばの14日、私は家の前でぼんやりと立っていた。 空はすでに夕日が落ち、星が見え始めている。 制服から楽な普段着に着替え、軽く上着を羽織った姿で私が何をしているかというと――― 隣に住む幼なじみ、伊波克幸(いなみかつゆき)の帰りを待っていた。 葛原沙織(くずはらさおり)、16才。 人生初の、本命チョコを持って。