軽快な音楽が鳴る車内。気になっていた事を聞いてみた。


「何処へ行くんですか?」


「近くのショッピングモールで買い物に付き合ってもらおうと思って」



「菜々さんに贈り物ですか?」


「まぁ、そんな所」


ヒロさんは何故か意味深な微笑みを浮かべてて、その笑みはいつもの爽やかさとは違う色気のある妖艶な笑みな気がした。

自然に顔が赤みを帯びてくのがわかった。



何だか調子狂うな



戸惑いを感じながら顔の熱が早く冷めるように扇いでいると



「桃さん、熱いですか?」


「い、いえ!大丈夫です!」

慌てて否定していたら

「少し顔が赤いみたいだけど、大丈夫?」


「だ、大丈夫です!」


ちょうど信号が赤になりこっちを向いたなと思っていると、不意に顔が近づきオデコとオデコが重なった。


ーードクン

心臓が大きな音を立てはじめた。


「な、な、何でしょう」


「熱はないですね」


思わず逃げようと後ろに引くと、それを逃がさない様に後頭部をガッチリ押さえられた。
顔が斜めになり、迫って来た時


ープップー


ーーービクッ

思わず身体が跳ねて、口唇が後1センチで重なりそうな時クラクションが鳴った。


信号が青に変わり離れ際に




「残念。おあずけですね」



何とも色っぽい言葉を頂戴した。


色気のある艶っぽい声が耳元で囁きすぐ離れていいく。


安心した様な残念な様な、訳のわからない気持ちに戸惑いを隠せずにいた。


横目でヒロさんを見てると、目が合い微笑むと流れるような動作で人差し指を口唇に当てた。


慌てて目を逸らし窓の外へ視線を向けた。


本当に調子狂う


さっきの事を思い出し再び顔が熱を持ち、違う事を考えようと気持ちを落ち着かせた。






この時から歯車は狂いはじめていたのかもしれない。