「また、泣いてたんだ。」

「泣きたくて泣いてるわけじゃない。」

 頬にまとわりつく髪を払いのけながら、涙を拭う。

「なんで泣いてたの?」

 空は時々、優しくなる。

「わかんない。」

「話す?」

「話さない。」

「そっか。」

 それがくすぐったくて、なんだか妙に変になる。

 さっき泣いていた理由が見えそうになったけど、今は泡になって頭の中で弾けて消えた。