それから母は私のことを“あんた”と呼ぶようになった。

 ……

 私は涙を流していた。

 悟さんの腕の中で。

 なぜだかはわからないけど、ただ涙が次から次へと溢れた。

 悟さんの腕の中は、あったかすぎた。

「悟さんのこと、嫌いってゆう感情はないです。」

 なぜかこの人は嫌いになれない。

 そう思ったんだ。

「なら、よかった!!」

 眼鏡の奥の切れ長い二重の目が少し細くなった。