空の声。

「行こ?」

 行く?どこへ?

 私が帰りたい場所なんて存在しない…。

 静かに差し出された手を、私は見ることしかできなかった。

 帰りたくなかった。

 彼は動かない私を見て、ぶらーんと肩から伸びている腕をそっと掴んだ。

「夜遅いんだから、送ってく。」

 強引に手を引かれ、私の足は動き出す。

「ちょ…待って!!」