「っていうかここどこなのよ!? レティを狙ってたあの甲冑の人はどうなったの!?」


突っかかったついでとばかりに、ずっと気になっていたことを聞くと、アッサリと「それは俺だ」と目の前の男が言った。
あまりに予想もしていなかった返答に、私はまた「は?」という間抜けな声を出してしまう。

「口を開けるな間抜け」と、またもや辛辣な前置きをしてから、


「可愛いレティを攫う不届きものかと思って切りかかったのだが、違ったようだから詫びもかねて我が城に招待した。 ここは、お前みたいな身元の知れない奴は、一生かかっても入れない場所だ。感謝しろ」


フンと鼻を鳴らしながら嘲笑の笑みを浮かべるレティのお兄さんは、本当にレティと血が繋がっているのかと疑いたくなる。

チビたちも中学生組も生意気で我儘だったけれど、ここまで自己中で傲慢な性格をした子は一人もいなかった。

生意気に突っ張って見せても、その実は甘えたくてでも素直に甘えられない、本当は優しい心を持っている子たちばかりで。
親に捨てられたり、虐待されたり、色々抱えている子たちが集まるあの施設は、血のつながりはなくてもウメさんを中心に確かに家族だったのだ。
口では生意気なことを言っていても、思やりの心は必ず持っていたとてもいい子たちだった。

――……なのに、コイツはなに?


一国の王子様だか何だか知らないけど。魔法が使えるのかもしれないけれど。
妹の前と私の前じゃ、こんなにも態度が違う上に差別するような言葉を平気で口にするなんて。


「……あんたが次期国王じゃ、この国の未来は絶望的だね」


吐き捨てるように口にすれば、目の前の男の表情は一瞬で不穏なものに変わった。