この世界に来たことすらまだどこかで夢であってほしいと願っているのに、私が魔法を使えるだなんて、そんなこと素直に受け入れられるはずがない。


「サラ、この事実がサラにとってとても重い事実だと分かっているけれど、私はサラの魔法を目の前で見たの。 それにさっき話をしてくれたシンクという生き物も、もしかしたらサラの召還した使い魔なのかもしれないわ」

「でも、私魔法で呼び出したりなんかしてない! シンクは起きたらいたんだよ?」


レティの口ぶりが、とても子供のように思えないのは気のせいなんかじゃない。

きっとレティはあのとき芝生で会ったレティじゃなくて、この国の王女のレティとして話しているんだ。


「魔界の生き物は、一番等級の高い1等級の魔物は人間の姿をしているけれど、他の魔物は動物の姿だとされているの。 さっきサラの言ったような靄の黒い塊の生き物なんて、史実にも載っていない」

「っ、そんなこと、言われても……」


真っ直ぐに見上げるスカイブルーの瞳から、私は初めて自分から視線を反らした。






「レティ、急にたくさん問いただしてもいい結果は得られないよ」


突然割り込んだ第三者の声に、私は下げた視線をすぐに声のした方に向け、レティを自分の背後にかばう。

私の行動が多少強引だったせいか、レティが「きゃ、」と小さな声を上げたけれど、視線の先にいた金髪の男の人を見て自分の中の警戒スイッチをすぐにオフにした。