「絢ちゃん!」
夏夜くんがこっちに向かってくる。
夏夜くんには、夏くんが見えるのだろうか。
「兄貴、こっち来てるけど」
「それより、夏くん……!」
あれ……?
言いたい事が、見つからない。
どうしてだろう。
伝えたい事、たくさんあったのに。
もう、会えないかもしれないのに。
どうして、いざ会いたい人を見ると、言葉が出てこないんだろう--。
「……っ、うっ……」
自然と涙が出た。
泣いてどうにかなる事じゃない。
それは分かっていた。
なのに……涙が止まらない。
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