「夏くん……」 なんで、ここにいるの……? 「絢ちゃん、どうした……?」 風の音に紛れて、夏夜くんの声がする。 「ごめんな、兄貴待たせてんだよな」 夏くんは申し訳なさそうに言った。 「ううん……大丈夫だよ」 何が大丈夫なのだろうか、人を待たせているというのに。 「ねえ、話がしたいの」 私は夏くんをすがるように見た。 今話さなかったら、もう、会えないような気がして……。