ガラス細工は手乗りサイズで、母が生きていた頃にもらったものだ。 「笑美ちゃん?ちゃんと用意できた??」 ドアの向かい側から紗羅さんの声が聞こえたので、荷物を手に取って外に出た。 「お世話になりました」 はじめてまともに家を見た気がする。 前まではうつむいてみようとしなかったから。 外から見る家はいつもとはまるで違うように見えた。 もう二度とここに来ることはなくなる。そう思うとすこしは気持ちが楽になっていた。