「もしもし?……果歩だけど」


『果歩、どうした?何か元気なさそうだけど』



夜、あたしは彰宏に電話をかけた。



「今日さ、何してた?放課後、とか」


『あぁー。
ほら、この前のメールでさ、柔道部ですぐに手を出してくる知り合いと椿駅の辺りにいたって話をしただろ?
今日もその子と一緒だったんだよ』



彰宏、またあの嘘を吐くつもりなんだ。



「その柔道部の子ってさ……、そんなに、強いの?」


『あぁ。
小さい頃から柔道やっててさ、いろんな大会で賞を貰ったりしてるんだよ』


「へぇー。すごい子、……なんだ、ね」



全く動揺もしてないみたいに話す、彰宏が許せない。


いや、違う……かな?


彰宏に少しも動揺させられない自分が悔しくて、彰宏が動揺してくれないことが、悲しい。



『どうした?
少し、声がおかしい気がするけど……?』