「うん、多分知ってる人は少ない」
「えー……レイもそれ知ってたん?」
「うん、知ってた」
「そうかあ……」
「でも、その人は……私のことを友達みたいに接してくれるけど、でも、もう一回付き合おうって言ったら、多分拒否すると思う。なんか結局だらだらきてるだけなのよね……」
「じゃあ、その元彼に会って、けじめつけてきたら、さっぱりするんちゃう?」
「会ったよ、何回も。けど、会う度に、過去のこととか未来のことなんてどうでもよくなって、結局、その場だけの優しい感情で2人ともぼんやり過ごしてしまうの。違うの、何もしないんだよ。一緒に寝たりもしない」
「難しいなあ……」
「うん……」
「そうか、思い切ってその上司と付き合ってみたら?」
「……」
「今のままでどうしようもないんだったら、どうにかしたら変わると思うよ。それが、付き合う、っていう方向がええんかどうかは俺には分からんけど、けど、なんかしたら違ってくるよ」
「付き合って、好きになれなかったらどうしよう……」
「その時は……別れるしかないかなあ……。けど、相手も努力すると思うよ、そんな心境なん分かっとったら。死に物狂いで、俺の物にしようって、思うやろね」
「その、私の心境を相手に、上司に言った方がいいのかなあ?」
「言われたらちょっとショックやけど、それでも手元におってくれた方がとりあえずは安心かな、俺の場合」
「そうかあ……そうだよね……多分、私でもそう。それでもダメなら、きっと自分じゃダメだったんだって諦めつくよね」
「うん……最初は辛いやろけどなあ。そんなんで相手抱くなんて、辛すぎるな……」
「そうだね……」
「……、罪作りやなあ。ほんまに」
「何が?」
「いや、何でもない、何でもない」