それは突然だった。
「おっじゃま~!」
ハイテンションな魁斗があたしの寮に入って来たのだ。
勿論、あたしは素の姿。
お互いに固まり、しばらくは見つめ合っていた。
「…だあれ?」
最初に言葉を発したのは魁斗だった。
咄嗟に頭の中で色々考える。
そして、一つ思い付いた。
「そっちこそ、誰ですか?」
“優哉の彼女”を演じること。
梨花には悪いけど、コイツは梨花に会ったことはない。
だから上手くいけば隠せるだろう。
「誰って…優哉の友達」
「そうでしたか。あたしは……優の、その…」
“彼女です”
少し照れたように言えば、案の定あんぐりと口を開ける魁斗。
目が点になってるし。ウケる。
「か、のじょ…?」
「はい。もしかして、こないだ電話で…」
「ああ、うん。そ、かもしれない、ね?」
何コイツ。もしかしてまだ彼女いる、って信じてなかったわけ?
失礼な奴。
「あの、それで…優に何か?」
「へ!?あ、あー…たいした用じゃないから。うん、僕はこれで───ごゆっくり!」
バタンッ、部屋の扉が閉まった。
何か……騒々しい奴。
まあこれでごまかせただろう。
部屋に入ったのが単純な奴で良かった。