───と、その時。


倉庫の壁に寄り掛かっていた幹部の一人が、動いた。




「ふーん…?」




含みのある言葉。そして、下っ端が全員殺られたというのにこの余裕さ。


コイツらには“仲間”なんてないのか…?




「流石、全国No.1だね」

「……何が言いたい」

「なーんも?でも……」




そこでソイツは言葉を止め、あたしに近づいた。




「でも、俺らは強いよ?」




あたしの目の前で不敵に笑って見せたソイツ。



“俺らは強いよ”



まだ、分からない。


だけど……何故か、嘘には聞こえない。




「お前が、総長か…?」

「……どうかな?」

「名前は」

「……仕方ないなあ。俺はね、音無楓」





オトナシ、カエデ…。


それが、コイツの名前。




「ウチの総長さんに近づくな」

「……瑠羽」

「はいはい、副総長サンは怖いなあ」




……思ってないくせに。





「じゃあ、まずは……副からっ」

「うおっ」




と、突然音無は瑠羽に殴りかかった。


……速い。


しかし流石瑠羽。ひょい、と交わした。



ああ、当たらなくて良かった。