受験が本格的になるにつれて、あたし達の会う回数は減っていった。

メールや電話はしていたけど、何となく、小さな溝の様なものはお互い感じていた。
それは進路の事も原因だろうし、それ以外の原因も、多分あった。

そう、例えば、増岡君の事とか。


「コウちゃん」

あれは高校3年の夏の入り口。
日差しがきつい、梅雨明けの7月末。

久しぶりにタケルの高校に行ったあたしに声をかけたのは、すっかり日に焼けた増岡君だった。

「来てたんだ」
「うん。今日、最後の試合だって聞いたから」
「練習試合だけどね」

今日はタケル達の引退前の最後の試合だった。
しばらくタケルにも会ってなかったし、最後くらい応援に行こうと思って差し入れを持って来たのだ。
と言っても、料理のできないあたしが持ってきたのは、凍らせたアクエリアスだけど。

「タケル、多分後輩達と一緒にいるよ。呼んでこようか?」
「あ、大丈夫。お昼にいつものとこにいるって言ってあるから」