「結構時間かかると思うけど」
「そっか」
冬の夕方は寒い。
いつになるかわからないのを待つのも気が滅入った。
「じゃあ、先に帰ろうかな」
「俺進路指導タケルより後だし、伝えとくよ」
「ありがとう」
そう言うと、増岡君はマフラーを持ち上げて
少し笑った。
タケルは口元までマフラーは上げない。だからたまに唇が乾燥している。
増岡君は逆だな、と思った。
「増岡君は、進路決めてるの?」
「俺?俺はD大一本」
「うそ、D大?あたしK女子だよ」
増岡君が言った大学は、あたしが受けようと思っている大学と同じ県だ。
タケルは近いけれど同じ県ではない。知り合いが同じ県の大学を受けると知って、少しうれしくなった。