びゅうっと、冷たい風が吹いた。タケルが
寒そうに肩をすぼめる。

「帰ろっか」

あたしは立ち上がって言った。スカートから覗く膝が冷えて痛かった。

タケルは少し逡巡してたが、あたしに倣って立ち上がる。

中学の頃より背が伸びた。中学の頃もあたしよりは高かったけど、今はもっとその差ができていた。

「背、伸びたよね」
「もう止まったよ」
「十分じゃん」
「ほんとはマスくらい欲しかったけど」

そう言って視線を遠くの海に移す。その横顔を見ながら、いつかの横顔とだぶらせた。

そうか、増岡君は、タケルより、背が高い。


「マス、受験終わったよ」


視線を逸らしたまま、タケルはゆっくり言った。
あたしも少し視線を落とし、「そう」と呟く。
視線の先に、枯れてしまった雑草が見えた。