「え、香?」
しばらくして、タケルが姿を表した。部活の友達と一緒だった。その中に、増岡君もいた。
「どしたの、今日いつものとこで待ち合わせって言ってなかった?」
「うん、えっと、早く学校終わったから・・・・・・」
「え、タケルの彼女?」
タケルの周りの友達は、まるで天然記念物を目の前にしたかの様に目を丸くして盛り上がっていた。
無理もない、あたしがちゃんとタケルの友達の前に姿を表すのは、多分初めてだったから。
「おい、まじで可愛いって!」
「お前こんな可愛い子ならもっと早く紹介しろよ!」
「いや、タケルの彼女なら当然か」
次々とそんな事を言うタケルの友達。歩いている他の生徒も、「ああ、タケルの彼女か」という表情を見せていた。
あたしはそこでようやく、自分の今置かれている立場を把握したんだ。
ようやく、タケルの彼女になれた。
これでやっと、自信を持ってタケルの隣に並べる。街で顔を上げて、タケルと一緒に歩ける。
生まれて初めてあたしは、自分に自信が持てた。タケルの彼女でいていいんだと、ようやく感じる事ができた。
なのにどうして、こうなってしまったんだろう。