そんな努力もむなしく、一度だけ、日曜にタケルと街を歩いている所を、他校の女子に見られてしまった。
あたしもタケルも知らない子だったけど、彼女たちはタケルの事を知っていたみたいだった。

「あれ、タケル君じゃない?」

少し前を歩いていた彼女たちは、タケルを見つけて有名人に会ったみたいに小声で歓声を上げていた。
タケルは彼女たちに気づき、持ち前の愛想の良さで軽く笑って会釈をする。
彼女達はまた軽く歓声を上げ、そして、隣のあたしに目をやった。

あたしはただ必死に、俯いているだけだった。

彼女たちとは逆方向に進んでいたから横をすれ違う形になる。
その時の彼女達の視線は、間違いなくあたしの方に向いていた。

「え、うそ」
「まじで?」

タケルには聞こえない程の小さな声だったけど、あたしの耳には確実に、届いていた。

嫌みを言ったわけじゃなかったと思う。
その声に、悪意はなかった。
悪意があった方が、まだましだったと思う。

何でタケルの彼女がこの子なのか。
それが、彼女達の本心だった。