「香、また痩せた?」
「痩せてないよ。むしろ、受験のせいで太ったし。最悪だよ」
「わかんないよ。中学の頃よりは痩せてるじゃん」
「そりゃ、だって」

頑張った、から。
そう言おうとして、止めた。
タケルもそれを感じて、口を閉じる。

いつからか、あたし達はこういう術を身につけていた。

思っても、感じても、言わない。
言わなければ、発しなければ、変化はおこらない。どこかでそう思っていた。変えずにいるためには、何も言わないのが一番いいと思っていた。


でも確実に、そうやって2人の距離は離れていっている。
わかっていて、あたし達は逃げていた。