タケルが不思議そうに呟く。

きっと、さっきの女の子が渡したのは、手作りか、もしくはちゃんとした所で買った綺麗なチョコ。
そういうものを今日渡されたら少なからず意図はわかるけど、あたしの突き出した物はコンビニで買った形の崩れたチロルチョコ。
タケルが不思議がるのも、当然だ。

その事に気づき、あたしは急に恥ずかしくなった。

何で今日、こんな事をしているんだろう。
偶然タケルへの告白を聞いて、自分も言わなきゃなんて背中を押されて、たまたまポケットの中にかろうじでチョコと呼べるものがあって、そしてたまたま今日が、2月14日で。

そんな偶然が重なって、こんな大胆な行動に出るなんて、微塵も思ってなかったのに。

しかも渡したのは、チロルチョコ。
なんてちっぽけでみずぼらしいんだろう。

恥ずかしすぎてどう言っていいのかわからず、いっそその場を駆けだしてしまおうかと思った瞬間だった。