今日しかない。
寒いままでも、何でもいい。
2月14日。きっと今日しか、あたしのなけなしの勇気がほんのちょっとでも出る日はないから。
だから。
「・・・・・・っ、タケル、君」
校舎裏から出てきたタケルを、今にも消えそうな声で呼び止めた。
女の子は別の方向から出ていったらしい。周りには、幸か不幸かあたしとタケルしかいなかった。
「あれ、木崎?」
急に呼び止められてタケルは驚いて振り向き、同時に片手をポケットにつっこんだ。
一瞬見えたピンクの包装紙。それが何かなんて、聞かなくてもわかった。
「どしたの」
「え・・・・・・っと」
なけなしの勇気は、呼び止めるという行為だけで使いきってしまった。
あたしは自分がどうしたいかもわからずに、目の回りそうな緊張と戦っていた。