「タケル君の事、好きだったんだ」
あたしの足が止まったのは、告白の現場近くにいる事実からじゃなくて、その名前を耳にしたから。
思わず足を止め、声のする方向を見る。
校舎裏、告白にはうってつけの中庭には、違うクラスのあまり知らない女子と、同じクラスの大好きなタケルがいた。
自分でも驚く程俊敏に体を校舎の陰に隠し、嫌な音でドキドキいう心臓を必死に抑える。
タケルが告白されているのを見るのは初めてだった。
前にも言った様に、タケルはあまり告白されない。
告白するのはいつも決まって学年で人気の高い女子で、誰が聞いても名前を知っている様なそんな女の子ばかりで、こんな、あたしもあまり知らない目立たない子が彼に告白している事実に、正直動揺を隠せなかった。
みんな、考えている事は同じだったんだ。