タケルの笑った横顔が好きだった。
高い鼻と子犬みたいな目元がアンバランスで好きだった。
空気を吐き出す様な笑い声も好きだった。
最初の憧れはいつしか恋に変わり、中学の卒業を控えた2月、あたしは最初で最後の勇気を振り絞ったんだ。
そう言うと聞こえはいいかもしれない。
でも本当は、あたしがタケルに告白したのは、ただの偶然だった。
その日はいつもに増して寒くて、校舎を出たあたしは肩を震わせて顔をしかめた。
寒いのが苦手なあたしは、どうにかしていつも温まろうと策を練っていた。
マフラー、手袋などの防寒具は勿論、体を温める効果のあるものは片っ端から試していた。
どこで聞いたのか、甘いものを口にすると温まると耳にした日から、あたしはコートのポケットにチロルチョコを忍ばせる様になっていた。
その日も寒くて、学校に行く前にコンビニでミルク味のチロルチョコを2粒買い、登校時に一粒食べていた。
残り一粒を食べようとこっそりコートのポケットに手を入れた瞬間、校舎裏から女子の声が聞こえたんだ。