裕美は一度下に視線を移してから顔を上げた


その時の裕美の顔、すごく怖いと思った


一瞬にして、族の顔になった


「直人が動き始めた」

「またか、あいつら自分から動くの好きだな」


あきちゃんがふっと笑ったけど、あきちゃんの目は笑ってはいなかった


なぜかその冷たい、冷めた絵実にゾクッと背筋が凍った


「今度は、お前を殺す気だ」

「は?俺?」


あきちゃんを殺す気?


何で?あたしがなおちゃんから逃げたから?


それじゃ、それあたしのせいじゃん


それであきちゃんがもし死んだら?


いやだ、そんなこと考えたくもない


あたしが戻ればいいのかな


「あ..あたし行かなきゃ」


また自分を見失っていた、またあたしは一人で何でも考え込んで何でも解決しようとしていた


「千紗...何でそんな必死になんだよ」

「何で必死じゃないの!?あたし、あたしがなおちゃんのそばに居ればあきちゃん達は殺されないの!だからあたしが戻らなきゃいけないの!」


あきちゃんがあたしの手をガシッと掴んで、離さなかった


以降にもいけないあたしは彬ちゃんの腕をポカポカ叩いて“離して”とずっと叫んでいた


「行かなきゃ、怖いの。あきちゃんを失うのが怖いの!!」

「千紗、いい加減にしてくれ」


あきちゃんの言葉なんてあたしの耳に入っていなかった


ただ戻ることしか頭になかったあたしは彬ちゃんから必死で逃れようとしていた


そんなあたしを見ていらだったのか、あきちゃんはあたしをあきちゃんのほうへ向かせてあたしの頬をペシッと軽く叩いた