翔になら、話してもいいかな


「あたしね、中学の時なおちゃんと付き合ってたの」


あたしがゆっくりと話し始めた


最後まで話し終わるのに、途中で何度も言葉がのどでつっかえた


それでも話をやめなかったのはあたしが翔を信頼していたから


翔ならあたしの事情を分かってくれる、そう思ったから


翔にすべてを離し終わってあたしは翔を見た


翔は眼を見開いたままずっとあたしを見つめていた


「翔、大丈夫?」


翔に話しかけると翔は、見開いていた目をそっと閉じた


「千紗さんは、辛かったですよね」

「辛いなんて思わない、辛いって思ったら本当につらくなっちゃう」


辛くない、苦しくもない、でも楽しくもないし楽でもない


「何も思わないことにしたの」

「千紗....」


「千紗!?」


えっ!?後ろに振り返ると、裕美が立っていた


やばい、裕美に見つかった!


「裕美...」

「ちょっとあんた誰よ!」


裕美の目が豹変して、裕美は翔に突っかかろうとした


とっさに裕美に抱きついてあたしはとめた


「やめて!翔はあたしを守ってくれたの」

「...え」


裕美の上がっていたこぶしが下に下がった


「ねぇ千紗、早く戻ってきてよ」

「戻れない、あたしもうあきちゃん達に逢えない」