どうしてだめなの?どうしてあたしを縛るの?


翔なら“少しだけですよ”っていって家に帰してくれると思ったのに


「翔お願い!少しだけでいい、家の中に入れなくてもいいから...」


翔に抱きついて、翔に必死に訴えた


「お願い...お願い...」


翔はなにもいわずにずっと黙っていた


未だに泣きながらお願いするあたし


それでも、何も言ってくれなかった


「逢わせて...ままに逢わせてよぉ」


翔から手を離してそのまま床に崩れ落ちた


手で顔を覆ってなくあたしの肩にそっと手をかけた


その手を追い払って、家に帰ろうと走った


足が遅いあたしにはふりで、すぐに翔につかまった


大道路に出たあたし達はその場で口げんかをしていた


「離して!帰るの!」

「ダメです離しません!」


そのまま口げんかは続いて、大きな声を出しすぎたからか、お腹が急にいたみだした


「うっ....」


痛さで顔が歪んでるあたしを見て翔があたしを支えた


「なおちゃんにないじゃん、翔しかいないんだよ!」


もう頼る人が...翔しかいないの


お願い、一度でいいからママとパパに逢わせて


たった一度でいいから...


「千紗さん...行きましょう」

「...え、家帰るの?」

「いいえ、千紗さんの家です」