「秋って、まだああなんだな。」
私の運転する自転車の荷台に座る銀がぼそりとなにか呟いた。
「え?なんかいったー?」
私は懸命に自転車をこいでいてよく聞こえなかった。ちなみに、なぜ今自転車なのかというと、今まで毎日大学まで自転車通学だった私は、銀が自転車に乗れないので(猫だったから)、歩いていこうと言った。しかし、銀の自転車に乗りたいという我儘で、銀を荷台に乗せて、今、私が運転しているというわけだ。
「ちょっとカッコつけるところ。前とぜんぜん変わらないね。」
「銀、秋のこと覚えてたんだ。」
「うん。俺、あいつのこと嫌いだったから、何度か噛みついたね。猫だったときは。」
「ちょっと!人間の姿で噛み付いたりしないでね!?」
「もちろん。まぁ、でもさっき軽ーく噛み付いてやったな。」
「え!?」
驚いて後ろに視線をやると、銀はふふんと生意気そうな笑顔で私をみた。
「ハンバーグだよ。ハンバーグ。」