「そらちゃん今日もずっと寝てたねー」

見慣れたものを見るような顔でミサが覗きこんできた。
ふわふわの膝かけをマクラにして顔を机にのせ、私は苦笑い。

「あはは・・・でももうさすがに眠たくないから、7時限目は音楽聴くことにするよ」

カバンから音楽再生機器を二つ取り出して、『どっちにしようかなー』とつぶやいた。

「そらちゃんって本当に音楽が好きだよね。いつも歌うたってるしさ、中学の時は吹奏楽やってたんでしょ?ピアノとかも?すごいねー」

そう言ったミサは私の音楽再生機器を覗きこみ、

「それに普通二つも持たないよ」

と言ってケラケラ笑った。

「えー、だって8ギガじゃ曲が入らなかったんだもん!」

二つをカチカチつぶけながら笑った。
ミサは『へー』と不思議そうにそれを見つめていた。


「それにさ、そらが音楽が好きなのは、ミサがスポーツが好きなのと同じだよ。好きなものは、どこまでだって入り込めるでしょ?」

そう言うと、ミサは納得したように『なるほどね』と笑ってみせた。

イヤホンだったら聞こえてくる音はヘッドフォンには劣るが、よく聴いたらやっと聞こえる音を発見するのが楽しくて心地よかった。

今からの授業はこれを聴いて暇をつぶそうと思った。

『そらちゃん、テストとか大丈夫なの?』と良く言われるが、『留年しなかったらいいんだよ!早く卒業したいしね』と、私は笑うだけだった。